『こころ日誌・インスペクシオ』#20 ダウンコート
ダウンコート
地下鉄の階段を上がると私は両手にハッと息を吐きかけた。自分の吐いた息の白さに冬本番が近づいてきているのを感じる。
寒さはあるがそれでも学校への足取りは軽い。
理由は多分、ふたつ。
ひとつは、自分へのクリスマスプレゼントと思ってセールで買った可愛いファーのついた白のダウンコート。
今日初めて袖を通した。
クリスマスプレゼントをクリスマス前に下ろしちゃうのっていいの?とか誰にもツッコまれないのは、私の独り身ゆえの身軽さだ。
歩いてる途中にお店の前を通るとき、立ち止まってこのダウンに身を包んだ私をもう一度窓の反射で確認してしまう。
やっぱり可愛い。
自然と顔がほころんじゃうけど、誰に見られてるわけでもないからいいよね。
更に、もう一つの理由。
今日、19日が私のSCの仕事納め。
来週保育園の仕事も入っているが、それが終われば非常勤の私は世間様に比べると少し早い冬休みに入る。
「年末二人で一泊で温泉行かない?」
大学院時代の友達、ひかりからお誘いがあったのは今月の頭だ。
「いいよいいよ。クリスマスなんてどうせ私暇だし、行こう行こう」
と返事をしたが、ひかりはクリスマスは彼との約束があるから、クリスマスの後にって。
そりゃ、そっか。
羨ましくもあるが、だからと言ってひかりに嫌味はまるで感じない。
ひかりとはしばらくぶりだ。お互いに臨床の現場に出てからは年に数回会えるかどうか。
院生のころは、実習で受け持っているケースについて、2人で夜遅くまで話し合ったっけ。ペーペーの初心者が話し合ったところで大した議論ができるわけじゃないんだけど、なんか...楽しかったなぁ。
「私たち丸三日、ずっと院生室にいるよね」
一緒にカップラーメンを食べながら励まし合って、修士論文を書き上げた。
公認心理師の国試も一緒に勉強して乗り切った。
そんなひかりとの仲は、彼女に先に彼氏ができたからと言って簡単に揺らぐものじゃない。
「後、一週間ね。楽しみ~!」
私はつい独り言をつぶやいた。
でも、そのためには今日を乗り越えなきゃね。
そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか私は校門をくぐりぬけていた。
――――――
最新話です。次回の更新をお待ちください。
寒さはあるがそれでも学校への足取りは軽い。
理由は多分、ふたつ。
ひとつは、自分へのクリスマスプレゼントと思ってセールで買った可愛いファーのついた白のダウンコート。
今日初めて袖を通した。
クリスマスプレゼントをクリスマス前に下ろしちゃうのっていいの?とか誰にもツッコまれないのは、私の独り身ゆえの身軽さだ。
歩いてる途中にお店の前を通るとき、立ち止まってこのダウンに身を包んだ私をもう一度窓の反射で確認してしまう。
やっぱり可愛い。
自然と顔がほころんじゃうけど、誰に見られてるわけでもないからいいよね。
更に、もう一つの理由。
今日、19日が私のSCの仕事納め。
来週保育園の仕事も入っているが、それが終われば非常勤の私は世間様に比べると少し早い冬休みに入る。
「年末二人で一泊で温泉行かない?」
大学院時代の友達、ひかりからお誘いがあったのは今月の頭だ。
「いいよいいよ。クリスマスなんてどうせ私暇だし、行こう行こう」
と返事をしたが、ひかりはクリスマスは彼との約束があるから、クリスマスの後にって。
そりゃ、そっか。
羨ましくもあるが、だからと言ってひかりに嫌味はまるで感じない。
ひかりとはしばらくぶりだ。お互いに臨床の現場に出てからは年に数回会えるかどうか。
院生のころは、実習で受け持っているケースについて、2人で夜遅くまで話し合ったっけ。ペーペーの初心者が話し合ったところで大した議論ができるわけじゃないんだけど、なんか...楽しかったなぁ。
「私たち丸三日、ずっと院生室にいるよね」
一緒にカップラーメンを食べながら励まし合って、修士論文を書き上げた。
公認心理師の国試も一緒に勉強して乗り切った。
そんなひかりとの仲は、彼女に先に彼氏ができたからと言って簡単に揺らぐものじゃない。
「後、一週間ね。楽しみ~!」
私はつい独り言をつぶやいた。
でも、そのためには今日を乗り越えなきゃね。
そんなことを考えながら歩いていたらいつの間にか私は校門をくぐりぬけていた。
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最新話です。次回の更新をお待ちください。