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トラウマケアにおける保存療法という選択肢

トラウマケアにおける保存療法という選択肢

トラウマケアにおける保存療法という選択肢

久しぶりのコラム更新となりました。
今回は、当相談室で大切にしている「トラウマケアのもう一つの選択肢」についてお話しします。

トラウマケアには「根治を目指す方法」と「保存療法的に向き合う方法」がある

当相談室では、以下のようなトラウマケア技法を提供しています。

・ホログラフィートーク

・EMDR

・TFT

・自我状態療法

・ブレインスポッティング

これらは私が長年かけて学び、臨床の場で大きな助けとなっている技法です。
技法を学ぶことで、以前なら対応が難しかったケースにも向き合えるようになりました。
実際、技法によってトラウマが大きく軽減されたと感じるクライアントも多くいます。

ここまで読むと「技法を使ったトラウマ治療を推奨する記事なのかな」と思われるかもしれません。
ですが、実はその逆です。

強力な技法であっても、使わなくてもクライアントの苦痛が下がり、生活の質が向上するケースが多くあります。
むしろ、技法を使わない方が負担が少なく、結果的に良い方向へ進むこともあります。

私はこのアプローチを「トラウマの保存療法」と呼んでいます。

保存療法とは「根治ではなく、症状と付き合いながら生活を支える方法」

心理領域ではあまり使われない言葉ですが、ここでは医学の保存療法になぞらえて、

「トラウマを根治させるのではなく、影響を最小限に抑えながら生活を支える方法」

という意味で使っています。

この考え方を説明するために、少し私自身の体験をお話しします。

私が体験した“保存療法”

公表するのは少し恥ずかしいのですが、私は長年痔瘻を抱えています。

名古屋のN病院という有名な肛門科を受診した際、手術を勧められました。
ただ当時は緊急性を感じておらず、すぐに手術に踏み切れませんでした。

その後、同じく痔瘻に悩む友人がN病院で手術を受けたものの、数年後に再発したという話を聞きました。

さらに月日が流れたある日、突然痔瘻が悪化しました。
寝ていても痛いほどで、カウンセリングどころではありません。
「手術しておけばよかった」と後悔しつつも、痛みに耐えるしかありませんでした。

遠方の病院へ行くことができず、家の近くの肛門科を受診したところ、膿がゴルフボールほど溜まっていたそうです。
その場で切開し、膿を出してもらいました。

医師はこう言いました。

「手術で根治を目指す方法もあるけれど、再発リスクはゼロではない。
ひどくなる前に膿を出し、清潔に保ちながら生活する“保存療法”という選択もある。」

私はその方法を選び、今も痔瘻を抱えていますが、日常生活に大きな支障はありません。

つまり、保存療法とは“根治ではなく、症状と付き合いながら生活を支える方法”なのです。

トラウマケアと外科治療の意外な類似点

この痔瘻の経験は、トラウマケアにもそのまま当てはまると感じています。

EMDRやブレインスポッティングなど、トラウマそのものを処理し、根治を目指す技法があります。
多くのクライアントが「トラウマを完全に取り除きたい」と願います。

しかし、根治を目指すアプローチには以下のような負担があります。

・心身への負荷が大きい

・経済的負担がある

・根治の保証はない

・数年後の強いストレスで再発することもある

これは外科手術と同じです。

一方で、保存療法的なトラウマケアには次のような特徴があります。

・トラウマそのものを除去することを目指さない

・影響として出てくる感情や反応だけを安全に吐き出す

・心の膿を抜くように負担を軽減する

・クライアントのペースを尊重できる

これはまさに、私が痔瘻で受けた「膿だけ出して生活を支える治療」と同じ構造です。

技法を使うのも選択、使わないのも選択

私は技法を否定しているわけではありません。
技法はとても有用で、臨床の幅を広げてくれました。

ただし、技法を使うことが“正解”ではありません。
クライアントの状態や生活状況によっては、保存療法的なアプローチの方が適していることもあります。

・根治を目指すか

・生活を支えるか

・どちらが今のクライアントにとって最適か

それを一緒に考えることが、当相談室として大切にしている姿勢です。

まとめ

トラウマケアには、トラウマそのものの根治を目指すアプローチと、トラウマを抱えながら影響を最小限に抑えて生活する保存療法的なアプローチがあります。

これらはどちらが正しいということではなく、クライアントによって最適解は異なります。

当相談室では、トラウマケアに特に力を入れています。ですが、トラウマがあるから安易に技法を使って取り除こうという選択をすべてのクライアントに推奨はしません。
むしろ、クライアントの生活を支え、最適な選択肢を提示し、一緒に考えていくことを大切にしています。