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『こころ日誌・フィルトラティオ』#1 プロローグ

#1 プロローグ

「うわ~、真っ黒!」
自分の両手が煤で覆われているのを見て、思わず声が出た。

秋も少しずつ深まりを見せ、夕方は肌寒くなってきた。

今年もこの季節がきました!

ワクワク感が大きいのだが、一方で面倒くさい作業がある。
煙突掃除だ。

昨年の冬の間この相談室を温めてくれていた薪ストーブ。薪はその燃焼の過程でクレオソートという有害物質を含んだ煙を輩出する。その煙はストーブ本体から煙突に流れていく過程で冷却され、煙突の中に煤としてこびりつく。クレオソートは肌についたまま長時間放置すれば発癌リスクを高めるし、吸い込めば気管支炎を引き起こす。また煙突内にこびりついている煤に引火すると時に爆発することもあるそうだ。私は体験したこともないし、したくもないが、煙突火災で建物に引火し全焼するケースもあると言う。それを防ぐためには、シーズンが終わってから次のシーズンに入る前のどこかで、年に一度は煙突を掃除して、中に溜まった煤をきれいにしなくてはいけない。本当はシーズンが終わった春先に掃除した方が良いのだが、私のものぐさで、ついその作業を後伸ばしにしてしまっていたため、今年は取り掛かるのが、シーズン初焚きの直前のタイミングになってしまった。

煙突の下から専用のたわしを差し込み、そのたわしが煙突の内面の煤を落としていく。落ちてきた煤は下に構えたビニール袋に落ちるようにセットしてある。しかし、どうやってもその過程で手は真っ黒になるし、ビニール袋で受けきれなかった霧状の煤が部屋を汚してしまう。

思えば人の心も同じなのかも。
生活の中でいっぱい傷つき、その度に心に煤が溜まっていく。それを放置すると時に大爆発を起こす。
だから、やっぱり綺麗にしなければいけないのだが、綺麗にしようと思うと、その過程でこうして掃除する側が真っ黒になってしまう。

なんでも自分の仕事に結びつけて考えてしまうのは、職業病なんだろうなぁ。

一人で自嘲した笑いを浮かべていたときだ。

トゥルルルルトゥルルルルトゥルルルル

固定電話の電子音が部屋に響いた。