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こころ日誌#3

出会い

続・初回受理面接

私はもう一度母親の方に向き直り、質問した。
「不登校はいつからなんですか?」

「1ヶ月前くらいからです。10月の中ごろに運動会があったんですけど、その練習のときですから…10月5日でしたね。運動会って皆で整列するじゃないですか。その最中にこの子倒れちゃったんです。まだその時期って全然暑いじゃないですか。熱中症みたいな感じになって、保健室に連れていかれて。それで、そのとき私の職場に電話かかってきて、倒れたから迎えに来てくださいって。当然行きますよね。上司には事情を説明してすぐに学校に行きました。それでその日は連れて帰ったんですが、帰ってからは家で普通に過ごしてたんです。だから一日休めば次の日行けるかなって思ってたんですが、次の日朝起きられなくて。いつもは声掛けすると起きてくるんですけど、その日は何度呼んでも起きてこないんです。それで、私も仕事行かないといけないので怒っちゃったんです。もういい加減に起きなさい!って。でも、この子全然ベッドから出てこなくて。無理やり起こそうとしたんですけど、布団にくるまって出てこないんですね。私としてもどうしていいか分からなくて。仕事も行かないといけないし、前の日も早退して次の日も遅刻っていうわけにいかなくて。それで、取り敢えず出かけないといけない時間になっちゃったから学校には『まだ調子悪いみたいですから休みます』ってメールして、私はこの子をおいて出かけたんです。それからですね。もうずっと行っていません。行けなくなってすぐに先生に紹介されて、学校のカウンセラーさんにも相談したんですけど、今は休憩が必要だから見守りましょうって言われて。でも家ではのんびり絵を描いてたりゲームをしてたりして過ごしてるんですよ。こんなんでいいんですか?」
ほぼノンストップで話し続けたので、少し疲れたのだろうか。母親は私が先ほど用意したウーロン茶に口を付けた。
母親の困り感はよく伝わって来るのだが、一方、その隣で無表情のままこの話を聞いているカオリの気持ちを思うといたたまれなくなる。

私からは「今日お会いした感じだと、カオリちゃんはとても緊張が強い子のように見えます。多分学校でもいつも緊張して過ごしていたのかもしれないですね。そうするととっても疲れます。緊張って、すごい体を疲れさせるんですね。ボーっと座ってるだけでも物凄く体力を使います。もしも今までカオリちゃんがそれをずっと続けてきていたとしたら、限界はどこかで必ず来ます。体がもう無理って思っちゃったのかもしれないですね。スクールカウンセラーさんが言うように、休憩が必要です。でも単に休ませて家にいるだけではもしかしたら改善は難しいかもしれません。カオリちゃんに今必要なのは社交場面で緊張しなくなる練習と、周りの人に対する恐怖心を克服することのように思えます。さっきした波長を合わせる練習もその一つです。緊張や恐怖は頭で考えて感じるかどうか判断するものではなく、カオリちゃんの体が勝手に反応しちゃうものです。なので、体の反応を解いていかないといけないんです。そのための練習をこれからここでしていくというのはどうでしょうか」と誘いかける。

母親は「是非お願いします」と言い、「いいね」とカオリにも問いかける。その圧に押されてか、カオリは無反応なようにも、若干首が縦にうなずいたようにも見えた。

こうしてカオリとその母親との初回の面接は終わり、次回2週間後に予約を取って帰って行った。