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『こころ日誌・インスペクシオ』#3 生徒指導連絡会

『こころ日誌・インスペクシオ』#3 生徒指導連絡会

生徒指導連絡会

「失礼しまーす」

小会議室に入室すると私は割り当てられた椅子に座る。
私の他にも生活指導部長、保健相談部長、教務部長、各学年主任、養護教諭、そして校長、教頭がそれぞれの席に着く。
生活指導部長の佐々木先生が、先ほど職員室で響いたのと同じ声で「お願いしまーす」と太い声を朗らかに響かせながらレジメをそれぞれの前に配ってくれる。
私も他の先生方と同じように「ありがとうございます」とレジメを受け取り、そこにさっと目を通す。
「それでは、第11回生徒指導連絡会を始めます。夏休み挟んでますから、連絡事項多いです。サクサクいきましょう。各学年から手短に学年の様子の報告お願いします。1年生余語先生お願いします」
慣れた口調で司会を務める佐々木先生。順次、学年主任から各学年の不登校生徒、問題行動生徒などの情報が共有され、その後全体の連絡、協議事項っていういつもの流れ。

「それでは2年生田中先生お願いします」と佐々木先生に促され、中年の女性が口を開く。
「2年生お願いします。毎度お騒がせしております3組工藤の件です。夏休み明けに暴行事案を起こしまして、現在特別指導中です。詳しくは佐々木先生いいですか?」と再び佐々木先生に話を戻す。
「はい。工藤については皆さんお馴染みですが、7月にゴミ箱を蹴ってボコボコにした件でも指導しております。その時『次はないぞ』ときつく言い聞かせたんですが、今回は更に、同じ組の広瀬に暴力がありました。加害者・被害者および目撃者から話を聞いて確認しております。それらの話を総合すると、2日の昼休みに、工藤がまた広瀬にちょっかいをかけて、広瀬はうっとうしいから相手しなかったみたいです。そしたら、工藤が『お前舐めてんのか!』って叫んだそうなんです。広瀬も広瀬で、バカにした態度で工藤を煽ったみたいなんですよね。そしたら、急に胸ぐらをつかんで絞め上げようとしたということです。それで、その日の夜、保護者呼んで話しました。これまでの経緯もありますので、進路変更含めて話をしましたが、父親は、相手の広瀬が煽ったのが悪いとか、そんな状況に学校が追い込んだのが悪いって言って責任転嫁する様子が見られます。確かに広瀬が煽った事実も今回確認されていますので、一方的に工藤だけに重い処分に課すことはせず、双方に反省文を書かせています。現在は指導室謹慎1週間の三日目です。この後、加納先生のカウンセリングを入れております。加納先生、今日の午後お願いしますね」

急に話を振られて少しびっくりした私は、

「あ、はい。この子非行系の子なんですか?」

と質問で返した。
それに対して佐々木先生ではなく、田中先生が答えた。

「そういう感じはないです。中学の時は通級を利用しています。でも中学からの申し送りでは、いじめの加害も被害もあったみたいですね」

通級?
てことは、発達さん?

「ここの自治体って、通級って診断なくても使えるんでしたっけ?」

これは市町によってルールが異なる。

「どうなんでしょう。ちょっと分からないですが、診断があるっていうのは聞いてません」と田中先生。

と教頭の吉田先生が口を開いた。
「通級は基本、保護者の希望があって、学校が必要を認めれば利用できます。特に医師の診断が要るということはないです」
さすが、今年特別支援学校からの異動してきたばかりだから、この辺りの制度については詳しいのね。

「あ、そうなんですね。分かりました。本人にはカウンセリングって、どういう風に説明されてますか?」
これには佐々木先生が答える。
「話を聞いてもらえるところだから行ってこいって伝えてあります。聞いてやってください」

ん~、一番困る奴だ。
具体的に何を期待されているのか漠然としたオーダー。
でも、この場で、それ以上はちょっと聞きにくい。

さらに、田中先生から、「終わったら保護者のこともありますので、今日の業後に担任含めて打合せお願いします」とのこと。

雑なSC運用についても、今日も残業が確定したことについても、顔が引きつりそうになるのを堪えつつ、「わかりました」と返事をした。

その後いくつかの議事が進められ、最後に佐々木先生が「それでは校長先生、お願いします」と言って会議中一言も話さなかった校長に話を振った。

身なりはきちっとして落ち着いた物腰の女性校長、橋本先生。

「2学期も大変だと思いますが、頑張っていきましょう。みなさん、よろしくお願いします」
穏やかな口調で会議を締めた。

たくさんの議題だったが、佐々木先生のスムーズな進行のお陰で早めの解散となった。
連絡会が終わり、小会議室から出たとき、4時間目は残り15分ほど。

「加納先生、いいですか?」

職員室に戻ろうとする私を少し低い女性の声が呼び止めた。
振り返るとそこにいたのは養護教諭の金井先生だった。

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