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ダイビング

ダイビング

私はスキューバダイビングの免許をもっていませんが、一度だけ沖縄の海で体験コースに参加し、海に潜ったことがあります。その際、インストラクターから、ダイビングは危険と隣り合わせのアクティビティであると説明を受け、その危険を回避するために、酸素ボンベの酸素の残量を確認や、体調のモニタリング、周囲の水圧に自身の内圧を合わせる方法などを習いました。それらの注意をしっかり頭に叩き込んでいざ海に潜ります。体験コースでしたので、深さはおよそ10m程度だったのですが、それでも十分。そこにはとてもきれいな色とりどりの魚の群れや、群生するサンゴが美しい海の青を背景に、生き生きと生命活動をする、とても神秘的で雄大な景色が広がっていました。私はとても感動して、この広い海をどこまでも探検したい、ずっとここで泳いでいたいという欲求に駆られました。でも、そこは体験ダイビング。短い時間、狭い範囲の遊泳しか許されず、しばらくすると、インストラクターの海から上がる合図があります。私は後ろ髪をひかれつつ、美しい海の底を後にしました。

その経験から、ときに私は社会生活をダイビングに例えるようになりました。我々は学校に行くにしろ、会社に行くにしろ、酸素ボンベを担いで家から出ていくようなものです。家から出た先にはさまざまな冒険が待っています。危険なこともあるかもしれませんが、宝物のような素敵な出会いやイベントがあるかもしれません。

それらの冒険に出かけるために何よりも大事なものは酸素ボンベでしょう。出かけてから帰ってくるまで十分な酸素残量のあるボンベがないと我々は窒息してしまいます。

そして不登校や引きこもりの方の話を聞いていると、極端に酸素ボンベの酸素の量が少ないのだなと思わされます。酸素の量が少ないから少しの潜水(社会参加)ですぐに窒息しそうな苦しさに襲われます。下手したら心が死んでしまうような体験を当事者たちは味わっているのです。そんな体験を繰り返すうちに、彼らにとって外出が恐怖でしかなくなってしまいます。体はその恐怖を回避するために全力で外出を拒否するようになります。その結果としての不登校や引きこもりなわけですね。

では、なぜこういった人たちは酸素を十分に持てないのでしょうか。私はここに二つの原因を見出しています。一つにはもともと持っている酸素ボンベの容量が少ないこと。もう一つにはボンベに穴が開いていることです。

順番に見ていきましょう。

酸素ボンベが小さいとはどういう状況でしょうか。これは心理学用語で愛着と表現されますが、安心感と言い換えることができます。ボンベが小さい人は安心感が少ないのです。我々はその育ちの中で安心感を貯めるタンクを成長させる時期があります。ですが何かの原因で上手くそのタンクを膨らますことが出来ないままにその時期を過ぎてしまうと、タンクは小さいままに体は成長します。そのまま海に潜ってもすぐに安心を消費しきってしまい、窒息してしまいます。

次にボンベに穴が開いている状況です。幼少期にしっかり安心のタンクを膨らませたとしても、不適切な衝撃を受けることで穴が開くのです。これを心理学用語ではトラウマと呼んでいます。トラウマを負った人はどんなに周りが優しく関わってくれたとしてもタンクに穴が開いていますから安心が貯まりません。また穴が開いたタンクはさらなる衝撃にとても弱くなってしまっています。私がインストラクターならこんな状態での潜水はとても許可できません。

ではそういった人が海に潜るため、すなわち社会参加するにはどうしたらいいのでしょうか?一つには途中で息継ぎスポットを作ることです。学校や会社に安心感を回復させる場所や活動を作れるならそれは窒息しそうになっている人の助けになることでしょう。

しかし社会は厳しいものです。息継ぎできる場所が必ずしも与えられないかもしれません。

そういった場合はやはり酸素ボンベを膨らませたり、穴を修復する必要が出てきます。「山の香りカウンセリングサービス」はそのために各種メニューを取り揃えております。お困りの方はぜひ御相談ください。