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カウンセラーは聞いてくれるだけで、なにも答えてくれない?

カウンセラーは聞いてくれるだけで、なにも答えてくれない?

カウンセリングを訪れる人々は、さまざまな悩みを抱えています。彼らは自分の困っていることを話し終えた後、「それで私はどうすればいいですか?」とカウンセラーにアドバイスを求めることがよくあります。カウンセラーならなにか良い対処法を知っていると期待して、お金も時間も労力もかけてカウンセリングに通うわけですから、それは当然の質問です。しかし、臨床心理士をはじめ、臨床心理学をバックボーンに持つカウンセラーが、その質問に対して「では、こうしてみましょう」と答えを出すことは少ないはずです。なぜカウンセラーは答えを出さないのでしょうか。今回はそんなお話です。

20年以上前に臨床心理士の養成コースで学んだ私は、クライアントに答えを与えることは避けるべきだと教えられました。「どうしたらいいですか?」という質問には「あなたはどう思いますか?」と問い返すのが適切な返しであるとされていました。実際にはそんな浅はかなことを教えていたわけではないのですが、当時の浅学な私には、そのように感じられました。そして、そんな返答でクライアントが納得したり、満足するわけないじゃないかと思いました。クライアントはカウンセリングに多くの負担をかけて助けを求めているのですから。結果として、カウンセラーがなにも言わないと失望する人もいるという話も聞いていました。当時の私のこの感覚は多くの一般の方の感覚に近かったのではないかと思います。そんな私でしたが、資格を取って実際の相談現場でさまざまな方のお話を伺う中で、やはりカウンセラーがクライアントになにがしかの答えを伝えるというのは一筋縄でいく話ではないという思いに至っています。

理由としては、臨床心理学がカウンセリングで提供しようとしているのは、問題の解決そのものではないということが挙げられます。例えば、食糧危機にある国に食料を与えるのではなく、野菜の育て方や魚の捕り方を教えるように、カウンセリングも答えを与えるのではなく、答えの出し方を学ぶことを支援するのです。

そもそも「どうしたらいいですか?」という質問に対する答えを、カウンセラー自身も持っていないこともあります。そう聞くと、「答えもないのにカウンセリングでお金を取るのか」と批判されそうです。

ですが、私のところに訪れるクライアントは、ほかの援助を求めても解決せず、最終的にカウンセリングに頼る人たちです。一時的な解決を見つけたとしても、すぐに同じ悩みに戻り、その悪循環を断ち切りたいと思っています。カウンセラーが「私はこう思う」と伝えても、「その解決策はもう試した、それでもダメだから困っているんだ」と言われることが多いです。

それでも「答えが欲しい」と強く求める人には、臨床心理学ベースのカウンセリングが合わないかもしれません。

しかし、深く悩んだ人の問題の答えは、ほとんどの場合、実はその人の中にすでにあります。答えがあるにも関わらず、それにたどり着けないのは、答えを直視することや、それに伴う責任を恐れているのです。

山の香りカウンセリングサービスでは、クライアントが自分自身と向き合えるように、さまざまな技法を使って支援し、励まし、安心を提供します。この場ではなにも恐れなくていいんだと頭ではなく体で実感できたとき、その人は、自然と自分の中の答えに向き合えるようになっていきます。