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自律神経を整えることの意味

私たちの心と体の活動を支える自律神経について、今回はポリヴェーガル理論の視点から解説したいと思います。

ポリヴェーガル理論とは?

ポリヴェーガル理論は、アメリカの神経科学者であるスティーブン・ポージェス(Stephen Porges)という人によって提唱された理論です。この理論は、私たちの意思でコントロールができない自律神経系という神経について解説しています。例えば手や足を動かすのは自分の頭で考えた行動ですが、心臓を動かしたり呼吸をするなどは思考とは独立して自律的に行う行動です。これらを司っているのが自律神経です。この神経は3つの主要な要素から成り立っています。このことを私はいつも車の運転に例えて説明しています。

自律神経の三つの要素

交感神経系(アクセル)

車の主な活動と言えば走ることですが、そのために必要なのがアクセルです。そして交感神経系は、車の運転で言うアクセルのような役割を果たします。様々な活動に取り組むとき、私たちは交感神経を活性化させて「やるぞ!」という精神状態をつくります。
走るためにアクセルが必要なように、活動に取り組むためには交感神経を活性化させることが必要です。ですが、持続的にストレスや危険に対して身体を活性化させ続けると、「戦うか逃げるか」しか選べない状態になります。アクセルを踏み込めば踏み込むほどスピードが出ますが、そのスピードが上がれば上がるほどコントロールが難しくなるのと同じように、交感神経が過剰に優位になると衝動コントロールを失い、これが躁状態に繋がることがあります。

役割: 身体を活性化し、即座に行動を起こすための準備を整える

状態: 過剰に活性化すると、緊張や不安、パニック状態を引き起こすことがあります

腹側迷走神経(フットブレーキ)

腹側迷走神経は、車のフットブレーキのように高揚した精神状態を落ち着ける働きをします。落ち着いた精神状態は体をリラックスさせますから、安心感が高まり、周囲の人たちとの交流を円滑にします。
この神経は他の二つの神経に比べて、その性能が生まれつきよりも後天的な環境要因の影響を受けやすいという特徴があります。つまり、トレーニングによって性能を上げていくことが可能です。

役割: 社会的な関わりを促進し、リラックス状態を保つ

状態: 適切に機能することで、社会的な関わりやリラクゼーションを促進

背側迷走神経(サイドブレーキとオーバーヒート)

背側迷走神経は、生命維持のための基本的な機能を管理する役割です。しっかりとした停車状態を維持するために使うサイドブレーキのような役割を持ちます。ですが、アクセルを踏み込み過ぎた車がオーバーヒートして動かなくなってしまうように、極度のストレス下では交感神経の過活動による過剰な負荷が原因で、凍り付き状態を引き起こします。これも背側迷走神経の役割です。

役割: 生命維持に関わる基本的な機能を管理し、緊急時には凍り付き反応を引き起こす

状態: 過剰に優位になると、無気力やうつ状態、社会的な引きこもりを引き起こす

自律神経のバランスを整える方法

ポリヴェーガル理論に基づくと、自律神経のバランスを整えることが精神的な健康にとって非常に重要です。そしてそのバランスとは過剰に働いている交感神経や背側迷走神経を落ち着かせ、腹側迷走神経が適切に機能できる状態を作ることです。以下の方法が有効とされています。

腹式呼吸

腹式呼吸(ダイアフラム呼吸)は、深く息を吸い込むことで背側迷走神経を落ち着かせ、リラックス効果をもたらします。

胸式呼吸

胸式呼吸(胸部呼吸)は、浅く息をすることで腹側迷走神経を活性化し、リラックス状態と社会的な結びつきを強化します。

ヨガ

ヨガのポーズやストレッチは、身体の緊張を解きほぐし、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。

マインドフルネスと瞑想

マインドフルネスや瞑想の実践は、腹側迷走神経を活性化し、心の平穏とリラクゼーションを促進します。

終わりに

ポリヴェーガル理論は、自律神経系のバランスを整えることで、心身の健康を保つための重要な示唆を与えてくれます。交感神経系(アクセル)、腹側迷走神経(フットブレーキ)、背側迷走神経(サイドブレーキとオーバーヒート)の3つの要素がどのように相互作用するかを理解し、適切なトレーニングをすることで、ストレスや不安を管理し、より健全な心理状態を維持するための方法を見つけることができます。
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