ダイビングから学ぶ社会生活と不登校・引きこもりの心理
以前書いた記事のリライトです
いつもこのコラムをチェックしてくれている皆さん、ありがとうございます。
私のカウンセリングを疑似体験してもらおうと思って書いた小説『こころ日誌』はもうお読みいただけたでしょうか。
『こころ日誌』の中でも以前に書いたダイビングの比喩が登場します。
そこで、今回その記事をリライトしてお届けすることにしました。
私のカウンセリングを疑似体験してもらおうと思って書いた小説『こころ日誌』はもうお読みいただけたでしょうか。
『こころ日誌』の中でも以前に書いたダイビングの比喩が登場します。
そこで、今回その記事をリライトしてお届けすることにしました。
沖縄の海で体験したダイビング
数年前、私は沖縄の海で体験ダイビングに参加しました。免許を持っていない初心者でしたが、インストラクターの丁寧な指導のもと、初めて海の底へ潜る経験をしました。
潜る前に教えられたのは「ダイビングは危険と隣り合わせの活動だ」ということ。酸素ボンベの残量を常に確認すること、体調をモニタリングすること、そして水圧に合わせて自分の内圧を調整する方法――これらを守らなければ命に関わるのです。
実際に海へ潜ると、深さはわずか10メートル程度でしたが、そこには驚くほど美しい世界が広がっていました。色とりどりの魚が群れをなし、サンゴが青い海を背景に生き生きと活動している。まるで別世界に迷い込んだような神秘的な光景に、私は心を奪われました。
「もっと深く潜りたい」「ずっとここで泳いでいたい」――そんな欲求が湧き上がりましたが、体験コースでは限られた範囲しか許されません。インストラクターの合図で海面へ戻るとき、私は後ろ髪を引かれるような思いで美しい海の底を後にしました。
潜る前に教えられたのは「ダイビングは危険と隣り合わせの活動だ」ということ。酸素ボンベの残量を常に確認すること、体調をモニタリングすること、そして水圧に合わせて自分の内圧を調整する方法――これらを守らなければ命に関わるのです。
実際に海へ潜ると、深さはわずか10メートル程度でしたが、そこには驚くほど美しい世界が広がっていました。色とりどりの魚が群れをなし、サンゴが青い海を背景に生き生きと活動している。まるで別世界に迷い込んだような神秘的な光景に、私は心を奪われました。
「もっと深く潜りたい」「ずっとここで泳いでいたい」――そんな欲求が湧き上がりましたが、体験コースでは限られた範囲しか許されません。インストラクターの合図で海面へ戻るとき、私は後ろ髪を引かれるような思いで美しい海の底を後にしました。
社会生活はダイビングに似ている
この経験をきっかけに、私は社会生活をダイビングに例えるようになりました。学校や会社に行くことは、酸素ボンベを背負って海に潜るようなものです。外の世界には冒険が待っています。危険もあれば、宝物のような出会いや出来事もあるでしょう。
しかし、十分な酸素がなければ潜水は続けられません。社会参加も同じで、安心感という「酸素」が不足すると、すぐに苦しくなってしまいます。
しかし、十分な酸素がなければ潜水は続けられません。社会参加も同じで、安心感という「酸素」が不足すると、すぐに苦しくなってしまいます。
不登校や引きこもりは「酸素不足」の状態
不登校や引きこもりの方の話を聞くと、極端に酸素が少ない状態で潜っているように感じます。少し外に出ただけで窒息しそうな苦しさに襲われ、心が折れてしまう。そんな体験を繰り返すうちに、外出そのものが恐怖になり、体が全力で拒否するようになるのです。
「外に出たい気持ちはあるのに、出ると苦しくなる」――この矛盾こそが、彼らの苦しみの本質です。
「外に出たい気持ちはあるのに、出ると苦しくなる」――この矛盾こそが、彼らの苦しみの本質です。
酸素不足の原因は「愛着」と「トラウマ」
では、なぜこういった人たちは酸素を十分に持てないのでしょうか。私はここに二つの原因を見出しています。一つはもともと持っている酸素ボンベの容量が少ないこと。もう一つはボンベに穴が開いていることです。
- ボンベが小さい(愛着の不足)
酸素ボンベが小さいとはどういう状況でしょうか。これは心理学用語で愛着と表現されますが、安心感と言い換えることができます。ボンベが小さい人は安心感が少ないのです。我々はその育ちの中で安心感を貯めるタンクを成長させる時期があります。しかし、何かの原因で上手くそのタンクを膨らませることが出来ないまま時期を過ぎてしまうと、タンクは小さいままに体は成長します。そのまま海に潜ってもすぐに安心を消費しきってしまい、窒息してしまいます。
- ボンベに穴がある(トラウマ)
次にボンベに穴が開いている状況です。幼少期にしっかりと安心のタンクを膨らませたとしても、不適切な衝撃を受けることで穴が開くのです。これを心理学用語ではトラウマと呼びます。トラウマを負った人は、どんなに周りが優しく関わってくれたとしてもタンクに穴が開いているため安心が貯まりません。また、穴が開いたタンクはさらなる衝撃にとても弱くなっています。私がインストラクターなら、こんな状態での潜水は許可できません。
- ボンベが小さい(愛着の不足)
酸素ボンベが小さいとはどういう状況でしょうか。これは心理学用語で愛着と表現されますが、安心感と言い換えることができます。ボンベが小さい人は安心感が少ないのです。我々はその育ちの中で安心感を貯めるタンクを成長させる時期があります。しかし、何かの原因で上手くそのタンクを膨らませることが出来ないまま時期を過ぎてしまうと、タンクは小さいままに体は成長します。そのまま海に潜ってもすぐに安心を消費しきってしまい、窒息してしまいます。
- ボンベに穴がある(トラウマ)
次にボンベに穴が開いている状況です。幼少期にしっかりと安心のタンクを膨らませたとしても、不適切な衝撃を受けることで穴が開くのです。これを心理学用語ではトラウマと呼びます。トラウマを負った人は、どんなに周りが優しく関わってくれたとしてもタンクに穴が開いているため安心が貯まりません。また、穴が開いたタンクはさらなる衝撃にとても弱くなっています。私がインストラクターなら、こんな状態での潜水は許可できません。
安心感を守る「水中の技術」
ダイビングには安全を保つための技術が複数あります。これを社会生活へ広げて考えると、具体的な支え方が見えてきます。
- インストラクター=支援者
初心者ダイバーにインストラクターが必要なように、困っている人には、助けてくれる人が必要です。心理職、教師、産業保健スタッフ、家族や信頼できる友人なんかがそれにあたります。技術と経験を持つ支援者が側にいることで、危険の兆候に気づきやすくなり、適切な上昇や休息が選べます。
- 耳抜き・内圧調整=セルフレギュレーション
深呼吸、ペース配分、ゆっくり話す、予定を詰め込みすぎない。環境の圧に合わせて自分の内圧を調整する習慣は、安心感の消耗を抑えます。
- ダイブプラン=生活の見通し
どこへ、どの深さまで、どれくらいの時間潜るのか。今日の外出の目的、滞在時間、休憩ポイント、帰還時刻の目安を事前に決めるだけで、負荷の予測可能性が上がります。
- バディシステム=伴走者
一人で潜らない。連絡が取れる人、困ったときに手を振れる人がいること。伴走者は安心感の予備タンクでもあります。
- インストラクター=支援者
初心者ダイバーにインストラクターが必要なように、困っている人には、助けてくれる人が必要です。心理職、教師、産業保健スタッフ、家族や信頼できる友人なんかがそれにあたります。技術と経験を持つ支援者が側にいることで、危険の兆候に気づきやすくなり、適切な上昇や休息が選べます。
- 耳抜き・内圧調整=セルフレギュレーション
深呼吸、ペース配分、ゆっくり話す、予定を詰め込みすぎない。環境の圧に合わせて自分の内圧を調整する習慣は、安心感の消耗を抑えます。
- ダイブプラン=生活の見通し
どこへ、どの深さまで、どれくらいの時間潜るのか。今日の外出の目的、滞在時間、休憩ポイント、帰還時刻の目安を事前に決めるだけで、負荷の予測可能性が上がります。
- バディシステム=伴走者
一人で潜らない。連絡が取れる人、困ったときに手を振れる人がいること。伴走者は安心感の予備タンクでもあります。
社会参加のためにできること
では、どうすれば海に潜れるのでしょうか。方法は二つあります。
まずひとつには途中で息継ぎスポットを作ることです。
学校や職場に安心を回復できる場を設けます。休憩室、相談窓口、信頼できる人との会話――小さな安心の場があるだけで、窒息しそうな人にとって大きな助けになります。
ですが、社会は厳しいもので、息継ぎできる場所が必ずしも与えられるわけではありません。
そういった場合は、二つ目の方法、つまりタンクを増量したり、修復するということが必要になります。つまり安心感を育て直し、トラウマを癒す取り組みを行うということです。心理的な支援やカウンセリングは、この修復作業にあたります。時間はかかりますが、確実に前進できます。
まずひとつには途中で息継ぎスポットを作ることです。
学校や職場に安心を回復できる場を設けます。休憩室、相談窓口、信頼できる人との会話――小さな安心の場があるだけで、窒息しそうな人にとって大きな助けになります。
ですが、社会は厳しいもので、息継ぎできる場所が必ずしも与えられるわけではありません。
そういった場合は、二つ目の方法、つまりタンクを増量したり、修復するということが必要になります。つまり安心感を育て直し、トラウマを癒す取り組みを行うということです。心理的な支援やカウンセリングは、この修復作業にあたります。時間はかかりますが、確実に前進できます。
まとめ:安心を取り戻すために
あなた自身や身近な人は、十分な酸素を持っているでしょうか。
「外に出るのが苦しい」「人と関わるのが怖い」――そう感じるなら、それは酸素不足のサインかもしれません。安心感を取り戻すことは可能です。小さな一歩から始めても構いません。
社会は厳しく、必ずしも息継ぎスポットが与えられるわけではありません。だからこそ、安心のタンクを育て直し、穴を修復することが大切です。
「山の香りカウンセリングサービス」では、そのためのサポートを行っています。もし社会生活に苦しさを感じているなら、ぜひご相談ください。あなたが再び海の美しさを楽しめるように、当相談室が伴走します。
「外に出るのが苦しい」「人と関わるのが怖い」――そう感じるなら、それは酸素不足のサインかもしれません。安心感を取り戻すことは可能です。小さな一歩から始めても構いません。
社会は厳しく、必ずしも息継ぎスポットが与えられるわけではありません。だからこそ、安心のタンクを育て直し、穴を修復することが大切です。
「山の香りカウンセリングサービス」では、そのためのサポートを行っています。もし社会生活に苦しさを感じているなら、ぜひご相談ください。あなたが再び海の美しさを楽しめるように、当相談室が伴走します。