『こころ日誌』の舞台裏
心理学的背景とカウンセラーの視点①
これまで毎週1話ずつ公開してきました小説『こころ日誌』。
読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
当相談室をご利用のクライアントさんからも「読みました」と声をかけていただくことがあり、私もとても励みになっています。
今回のコラムでは、私が作中に散りばめた心理療法の背景について、ちょっとした解説(裏話)をさせてください。
専門的な用語も出てきますが、「この場面で、鈴木カウンセラーはこんなことを考えていたんだ」と知っていただけると、物語をより深く楽しんでいただけるかと思います。
今回は物語の最初から、カオリがトラウマを告白するシーンまでを解説していきます。
読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
当相談室をご利用のクライアントさんからも「読みました」と声をかけていただくことがあり、私もとても励みになっています。
今回のコラムでは、私が作中に散りばめた心理療法の背景について、ちょっとした解説(裏話)をさせてください。
専門的な用語も出てきますが、「この場面で、鈴木カウンセラーはこんなことを考えていたんだ」と知っていただけると、物語をより深く楽しんでいただけるかと思います。
今回は物語の最初から、カオリがトラウマを告白するシーンまでを解説していきます。
1. プロローグの描写
まず、プロローグです。
かなりショッキングな描写から入りましたが、読んでくださった方はもうお気づきですよね。あれは現実の風景ではなく、カオリの心象風景であり、彼女が描いた「怖い絵」に象徴されている世界です。
あの絵が物語全体を貫く重要なカギになっていきます。
かなりショッキングな描写から入りましたが、読んでくださった方はもうお気づきですよね。あれは現実の風景ではなく、カオリの心象風景であり、彼女が描いた「怖い絵」に象徴されている世界です。
あの絵が物語全体を貫く重要なカギになっていきます。
2. 第2話「出会い」:凍り付く心とポリヴェーガル理論
初回、母親に連れられてきたカオリは一言も話すことができませんでした。
これは単なる人見知りではなく、極度の緊張による「凍り付き(フリーズ)」という反応です。
カウンセラーが呼吸法でリラックスを促すシーンがありますが、これは「ポリヴェーガル理論」という、現在多くのトラウマセラピストが参考にしている理論を背景にしています。
(自律神経の働きを整えることで、心の安心感を取り戻すアプローチです。いつかこの理論についても詳しく解説したいですね)
さらにここで、私が作中で何度も使っている「HRV呼吸法」や「10秒呼吸法」が登場します。
10秒呼吸法はリズムさえ覚えれば比較的誰でも取り組むことができ、簡単に心を落ち着かせることができる方法ですので、皆さんも是非日常に取り入れてみてください。
一方、HRV呼吸法に関してはトレーニングが必要です。一定のリズムで呼気・吸気を繰り返し、その安定がぶれないようにするために、私自身も何年も呼吸のトレーニングを続けています。
これは単なる人見知りではなく、極度の緊張による「凍り付き(フリーズ)」という反応です。
カウンセラーが呼吸法でリラックスを促すシーンがありますが、これは「ポリヴェーガル理論」という、現在多くのトラウマセラピストが参考にしている理論を背景にしています。
(自律神経の働きを整えることで、心の安心感を取り戻すアプローチです。いつかこの理論についても詳しく解説したいですね)
さらにここで、私が作中で何度も使っている「HRV呼吸法」や「10秒呼吸法」が登場します。
10秒呼吸法はリズムさえ覚えれば比較的誰でも取り組むことができ、簡単に心を落ち着かせることができる方法ですので、皆さんも是非日常に取り入れてみてください。
一方、HRV呼吸法に関してはトレーニングが必要です。一定のリズムで呼気・吸気を繰り返し、その安定がぶれないようにするために、私自身も何年も呼吸のトレーニングを続けています。
3. 第3話・4話:母親(とも子)の態度とタイミング
初回の母親(とも子)の態度、皆さんはどう感じましたか?
困っているけれど、どこか娘にイライラしていて、自分は関わりたくない……そんな「防衛」の姿勢を描きました。
私が、母親の問題(共感不全)にすぐ切り込まなかったのは、この時のとも子の態度を見て「今はまだ、その時期ではない(ラポールが築けていない)」と判断したからです。カウンセリングでは、正しい指摘をすることよりも**「タイミング」が命だったりします。
困っているけれど、どこか娘にイライラしていて、自分は関わりたくない……そんな「防衛」の姿勢を描きました。
私が、母親の問題(共感不全)にすぐ切り込まなかったのは、この時のとも子の態度を見て「今はまだ、その時期ではない(ラポールが築けていない)」と判断したからです。カウンセリングでは、正しい指摘をすることよりも**「タイミング」が命だったりします。
4. 大雪の日:薪ストーブとトランス状態
そして、物語が大きく動いた「大雪の日」。
寒さに震えるカオリを薪ストーブの前に招き入れました。
「こういうときは動かない方が良い」というドーラの言葉(ジブリですね笑)を引用しましたが、鈴木カウンセラーはカオリが「ふーっ」と息を吐いた瞬間を見逃しませんでした。
これは私が「自我状態療法」の研修の中でハルトマン博士から学んだ介入のタイミングの見極めです。
炎を見つめてリラックスしたカオリは、いわゆる「トランス状態(催眠状態)」に入っています。
普段の理屈(大脳新皮質)のガードが下がり、無意識の深い部分にある本音が溢れ出しやすくなる状態です。
寒さに震えるカオリを薪ストーブの前に招き入れました。
「こういうときは動かない方が良い」というドーラの言葉(ジブリですね笑)を引用しましたが、鈴木カウンセラーはカオリが「ふーっ」と息を吐いた瞬間を見逃しませんでした。
これは私が「自我状態療法」の研修の中でハルトマン博士から学んだ介入のタイミングの見極めです。
炎を見つめてリラックスしたカオリは、いわゆる「トランス状態(催眠状態)」に入っています。
普段の理屈(大脳新皮質)のガードが下がり、無意識の深い部分にある本音が溢れ出しやすくなる状態です。
5. 不思議な記憶の正体
ここでカオリは、両親が喧嘩をし、母が「一緒に死ぬ」と言う衝撃的な場面を語り出します。
このシーンについて、少し補足させてください。
「そんな昔の、具体的な言葉まで覚えているものか?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
実は、私が敬愛する嶺輝子先生の「ホログラフィートーク」などの臨床現場では、トランス状態に入ると、通常の記憶(海馬のエピソード記憶)とは違う、「もっと深い、情動的なイメージ」が浮上することがよくあります。
それは、言葉を覚える前の乳幼児期の記憶であったり、時には前世のようなイメージとして語られることもあります。
カオリが見たあの光景も、頭で覚えている記憶というよりは、「魂に刻印された恐怖のイメージ」が、トランス状態によって鮮明に蘇ったもの……として描いています。
この記憶がいつのものなのか。それは今後の物語で明らかになりますので、そちらもこの物語の見どころとして読んでいただければと思います。
このシーンについて、少し補足させてください。
「そんな昔の、具体的な言葉まで覚えているものか?」と疑問に思われた方もいるかもしれません。
実は、私が敬愛する嶺輝子先生の「ホログラフィートーク」などの臨床現場では、トランス状態に入ると、通常の記憶(海馬のエピソード記憶)とは違う、「もっと深い、情動的なイメージ」が浮上することがよくあります。
それは、言葉を覚える前の乳幼児期の記憶であったり、時には前世のようなイメージとして語られることもあります。
カオリが見たあの光景も、頭で覚えている記憶というよりは、「魂に刻印された恐怖のイメージ」が、トランス状態によって鮮明に蘇ったもの……として描いています。
この記憶がいつのものなのか。それは今後の物語で明らかになりますので、そちらもこの物語の見どころとして読んでいただければと思います。
6. 第7話「板挟み」とカウンセリングの「枠」
さて、その後の「板挟み」の回では、父親の反対によって母親が動揺する場面がありました。
ここで私が気にしていたのが「枠(フレーム)」という概念です。
カウンセリングでは、時間や場所、約束事といった「枠」を非常に重視します。
例えば、一般の人が悩み相談を受けるとき、深夜まで延々と同じ話を聞かされるなんて体験はありませんか? そうなってくると聞いている方も、「いい加減にしてくれよ」という気持ちが出てくるかもしれません。
そんな風にならないように、決められた時間、決められた場所で、決められた料金をいただいて、私たち専門家は相談に乗るのです。作中でも「枠の中だからこそ、専門家が専門家としていられる」と表現しています。
そして、枠がしっかりしているからこそ、クライアントは守られた空間で安心して心をさらけ出せるのです。
母親がカオリだけを置いて行ったり、時間外に重要な話をしたりするのは、この「枠」が揺らいでいる証拠。私がそれにどう対処していくかも、カウンセリングの専門的な見どころの一つとして見ていただければと思います。
ここで私が気にしていたのが「枠(フレーム)」という概念です。
カウンセリングでは、時間や場所、約束事といった「枠」を非常に重視します。
例えば、一般の人が悩み相談を受けるとき、深夜まで延々と同じ話を聞かされるなんて体験はありませんか? そうなってくると聞いている方も、「いい加減にしてくれよ」という気持ちが出てくるかもしれません。
そんな風にならないように、決められた時間、決められた場所で、決められた料金をいただいて、私たち専門家は相談に乗るのです。作中でも「枠の中だからこそ、専門家が専門家としていられる」と表現しています。
そして、枠がしっかりしているからこそ、クライアントは守られた空間で安心して心をさらけ出せるのです。
母親がカオリだけを置いて行ったり、時間外に重要な話をしたりするのは、この「枠」が揺らいでいる証拠。私がそれにどう対処していくかも、カウンセリングの専門的な見どころの一つとして見ていただければと思います。
今回はここまでです。
一つずつ解説していくととっても長くなりますので、今回はここまでにして、次回また第8話以降の解説を書いていこうと思います。
楽しみにしていてください。
楽しみにしていてください。