こころ日誌#48
エピローグ①
20〷+4年11月
どんなに経験を積んでも初回のカウンセリングはやはり少なからず緊張がある。客を迎えるのに恥ずかしくない程度に相談室の掃除をし、クライアントに出す茶菓子の準備を済ませた後、自分用のコーヒーを淹れる。約束の時間まではまだ30分程度ある。手持ち無沙汰で落ち着かない気持ちを大好きなコーヒーの香りでリラックスさせつつ、私は今から会うクライアントの情報を再確認すべく、パソコンを起動させた。
パソコンの横のコルクボードには最近私のお気に入りの一枚の絵ハガキがクリップで留めてある。その絵ハガキは重いケースを終えて疲れ切ったときに私の精神を癒してくれる。
絵ハガキに描かれているのは、赤いドレスをまとった女性とタキシードを着た男性が寄り添って立っており、その二人に満面の笑みで花束を渡す小さな女の子。
ときおり、絵ハガキを裏返しては文面を読み返す。
それを読むと更に私はパワーをもらえる感じがする。
「よ~し!新しいケースも頑張りますか!」
「鈴木さん。その節は大変お世話になりました。私は今高校3年生です。高校では美術部に入りました。先日の展覧会の絵を絵ハガキにしたので見てください。中学はあんまり学校に行けなかったから勉強が大変ですが、美大進学に向けて猛勉強している受験生です(笑) 山野カオリ」
どんなに経験を積んでも初回のカウンセリングはやはり少なからず緊張がある。客を迎えるのに恥ずかしくない程度に相談室の掃除をし、クライアントに出す茶菓子の準備を済ませた後、自分用のコーヒーを淹れる。約束の時間まではまだ30分程度ある。手持ち無沙汰で落ち着かない気持ちを大好きなコーヒーの香りでリラックスさせつつ、私は今から会うクライアントの情報を再確認すべく、パソコンを起動させた。
パソコンの横のコルクボードには最近私のお気に入りの一枚の絵ハガキがクリップで留めてある。その絵ハガキは重いケースを終えて疲れ切ったときに私の精神を癒してくれる。
絵ハガキに描かれているのは、赤いドレスをまとった女性とタキシードを着た男性が寄り添って立っており、その二人に満面の笑みで花束を渡す小さな女の子。
ときおり、絵ハガキを裏返しては文面を読み返す。
それを読むと更に私はパワーをもらえる感じがする。
「よ~し!新しいケースも頑張りますか!」
「鈴木さん。その節は大変お世話になりました。私は今高校3年生です。高校では美術部に入りました。先日の展覧会の絵を絵ハガキにしたので見てください。中学はあんまり学校に行けなかったから勉強が大変ですが、美大進学に向けて猛勉強している受験生です(笑) 山野カオリ」
エピローグ②
「アハハ!」
周囲から楽しげな笑い声が聞こえてくる。
それは自分に向けられた嘲笑か、それともオレなんか最初から存在しないかのような無関心か。
どっちだっていい。
一つだけ確かなのは、ここはオレのいていい場所ではないということだ。
今までオレに投げられた様々な言葉がそれを確信させる。
脳内で反響するそれらの言葉は、もはや悪口ではなく、自分に下された「判決」だ。
そしてその判決に従うことがこの世界の正しい秩序なんだ。
痛みを感じる資格さえない。救いを求める権利さえない。
「……ア、アァ……」
自分がここに存在してしまっているという「間違い」を、どうやって正すべきか。
ささくれを剥きすぎた爪の間から、じわりと血が滲んだ指先を見つめながら、少年はそれだけを、静かに考えていた。
終
周囲から楽しげな笑い声が聞こえてくる。
それは自分に向けられた嘲笑か、それともオレなんか最初から存在しないかのような無関心か。
どっちだっていい。
一つだけ確かなのは、ここはオレのいていい場所ではないということだ。
今までオレに投げられた様々な言葉がそれを確信させる。
脳内で反響するそれらの言葉は、もはや悪口ではなく、自分に下された「判決」だ。
そしてその判決に従うことがこの世界の正しい秩序なんだ。
痛みを感じる資格さえない。救いを求める権利さえない。
「……ア、アァ……」
自分がここに存在してしまっているという「間違い」を、どうやって正すべきか。
ささくれを剥きすぎた爪の間から、じわりと血が滲んだ指先を見つめながら、少年はそれだけを、静かに考えていた。
終