こころ日誌#36
面接構造
それからしばらく私はメールチェックするたびに、ソワソワする気持ちにさせられる日が続いた。
前回、隆志とのカウンセリングの終わり際の話し合いで、次回の約束をするときに、隆志ととも子の予定を合わせて、また予約を入れてくれるよう確認した。本来は10月10日に次回のとも子とカオリの予約が入っているが、それをどうするのかも含めて夫婦で話し合うとのことだ。
つまり、普段会話のない隆志ととも子が、私のいないところで今後のカウンセリングについて夫婦で話し合って決めるというのだ。
どうなるんだろうか。。。
今の二人の様子なら、そこで喧嘩になることはないのではないかと期待する。
が、確証はない。
そんなことを気にかけながらも、日々の業務はあり、山野家以外にも、それなりに重いケースをこなし、気づけば10月6日だ。日曜日であったが、私は、朝から夕方まで虐待対応関連の研修を受けて、余りの濃い内容にぐったりとしながらも、研修の内容に満足感をもって帰宅した。
家族は私の帰宅を待たずに既に夕食を済ませており、リビングで思い思いに過ごしている。私の「ただいま~」の一言に、末の娘が元気に「おかえり~」と飛びついてくる。それを横目に見た妻と長女も、「おかえり」と一言くれた。
妻がハンバーグを主菜とした夕食を私のために残しておいてくれたことに、まずは感謝する。「いや、今日の研修、すごい濃かった~」などと言いながら、そのハンバーグをレンジで温め、白ご飯をお椀によそう。妻は「そういう研修いいよね。よかったね」と自分の仕事の手を止めて、私の相手をしてくれる。そんな他愛ないやり取りをしつつ、別で温めた味噌汁と一緒にテーブルに並べ、準備が完了すると私は椅子につく。「いただきます」と言って、私はそれらを頬張りつつ、スマホを使ってメールチェックを始めた。
朝忙しくてメールチェックする暇がなかった。返信を要するメールは・・・
相変わらず広告メールが多い。が、その中にも、いくつか大事なメールが混ざっている。ひとつは新規の相談の問い合わせがあった。そして契約しているHP運営会社からの料金の支払い請求メール。そして・・・とも子からのメールだ。
「form: Yamano Tomoko subject: 今後のカウンセリングについて」
受信日時は20〷+1年10月5日 23:22になっている。
昨日の遅い時間にメールをくれていたようだ。
返信に1日待たせてしまったことになる。申し訳なさを感じつつ本文を開く。
「いつもお世話になっております。山野とも子です。
主人へのカウンセリング、ありがとうございます。
今度のカウンセリングは私と主人と一緒にすることになると聞きましたが、その場合、カオリはどうしたらいいですか?
できればカオリにも今後もカウンセリングを受けさせたいのですが、夫婦で伺ってカオリもお願いするとなると、どういう段取りでしたらよろしいでしょうか。
お返事ください」
私はあわてて返信メールを考える。
誰がいつどこで誰とカウンセリングをするのかという物理的なセッティングを面接構造と呼ぶ。構造をどう組み立てるかはカウンセリングを安全に行う上で重要な要素のひとつだ。そして、夫婦とその子どもとカウンセリングをする場合、それに応じて複数のカウンセラーが対応する場合もある。特に、親子の溝が深いケースなど、別々のカウンセラーが対応することで、カウンセラーが両者の板挟みに遭うのを防いだり、それぞれが思いを吐露しやすくなるというメリットがある。このような構造を並行面接と呼ぶが、ここは私一人でやっている自前の相談室だ。私以外の頼れるカウンセラーはいない。そもそも最初はカオリと私が会っていて、そのつながりの中で、とも子、隆志が面接の場に現れた。そして、その中でラポールを築いてきた。他のカウンセラーがいたとしても、やはり私が対応しなければ、見捨てられたとか、他に押し付けられたという印象を持たれてしまうリスクもある。そしてそのリスクがある以前に、クライアントの気持ちを最優先して、構造を組み立てるのがカウンセリングだ。
そう考えると、一番優先されるべきは・・・。
しばらく考えた末、私は返信を書き始めた。
そして、書き上がるころには、レンジで温めたハンバーグがまた冷たくなっていた。
前回、隆志とのカウンセリングの終わり際の話し合いで、次回の約束をするときに、隆志ととも子の予定を合わせて、また予約を入れてくれるよう確認した。本来は10月10日に次回のとも子とカオリの予約が入っているが、それをどうするのかも含めて夫婦で話し合うとのことだ。
つまり、普段会話のない隆志ととも子が、私のいないところで今後のカウンセリングについて夫婦で話し合って決めるというのだ。
どうなるんだろうか。。。
今の二人の様子なら、そこで喧嘩になることはないのではないかと期待する。
が、確証はない。
そんなことを気にかけながらも、日々の業務はあり、山野家以外にも、それなりに重いケースをこなし、気づけば10月6日だ。日曜日であったが、私は、朝から夕方まで虐待対応関連の研修を受けて、余りの濃い内容にぐったりとしながらも、研修の内容に満足感をもって帰宅した。
家族は私の帰宅を待たずに既に夕食を済ませており、リビングで思い思いに過ごしている。私の「ただいま~」の一言に、末の娘が元気に「おかえり~」と飛びついてくる。それを横目に見た妻と長女も、「おかえり」と一言くれた。
妻がハンバーグを主菜とした夕食を私のために残しておいてくれたことに、まずは感謝する。「いや、今日の研修、すごい濃かった~」などと言いながら、そのハンバーグをレンジで温め、白ご飯をお椀によそう。妻は「そういう研修いいよね。よかったね」と自分の仕事の手を止めて、私の相手をしてくれる。そんな他愛ないやり取りをしつつ、別で温めた味噌汁と一緒にテーブルに並べ、準備が完了すると私は椅子につく。「いただきます」と言って、私はそれらを頬張りつつ、スマホを使ってメールチェックを始めた。
朝忙しくてメールチェックする暇がなかった。返信を要するメールは・・・
相変わらず広告メールが多い。が、その中にも、いくつか大事なメールが混ざっている。ひとつは新規の相談の問い合わせがあった。そして契約しているHP運営会社からの料金の支払い請求メール。そして・・・とも子からのメールだ。
「form: Yamano Tomoko subject: 今後のカウンセリングについて」
受信日時は20〷+1年10月5日 23:22になっている。
昨日の遅い時間にメールをくれていたようだ。
返信に1日待たせてしまったことになる。申し訳なさを感じつつ本文を開く。
「いつもお世話になっております。山野とも子です。
主人へのカウンセリング、ありがとうございます。
今度のカウンセリングは私と主人と一緒にすることになると聞きましたが、その場合、カオリはどうしたらいいですか?
できればカオリにも今後もカウンセリングを受けさせたいのですが、夫婦で伺ってカオリもお願いするとなると、どういう段取りでしたらよろしいでしょうか。
お返事ください」
私はあわてて返信メールを考える。
誰がいつどこで誰とカウンセリングをするのかという物理的なセッティングを面接構造と呼ぶ。構造をどう組み立てるかはカウンセリングを安全に行う上で重要な要素のひとつだ。そして、夫婦とその子どもとカウンセリングをする場合、それに応じて複数のカウンセラーが対応する場合もある。特に、親子の溝が深いケースなど、別々のカウンセラーが対応することで、カウンセラーが両者の板挟みに遭うのを防いだり、それぞれが思いを吐露しやすくなるというメリットがある。このような構造を並行面接と呼ぶが、ここは私一人でやっている自前の相談室だ。私以外の頼れるカウンセラーはいない。そもそも最初はカオリと私が会っていて、そのつながりの中で、とも子、隆志が面接の場に現れた。そして、その中でラポールを築いてきた。他のカウンセラーがいたとしても、やはり私が対応しなければ、見捨てられたとか、他に押し付けられたという印象を持たれてしまうリスクもある。そしてそのリスクがある以前に、クライアントの気持ちを最優先して、構造を組み立てるのがカウンセリングだ。
そう考えると、一番優先されるべきは・・・。
しばらく考えた末、私は返信を書き始めた。
そして、書き上がるころには、レンジで温めたハンバーグがまた冷たくなっていた。